皆さん、身長を定期的に測っていますか?去年と比べて何センチ身長が伸びたでしょうか?いきなりですが、今回の内容をざっくり言ってしまうと『身体測定って役に立つんだよ』という内容です。実は成長期に入る前から身長を測る習慣をつけておくことはとても良いことで、スポーツの障害予防にも役立つ行動なんです。身長が伸びるというのはとても特別なことで、それは人生において成長期の今しか訪れることはありません。そんな特別な時期だからこそ、成長期特有の怪我が存在するというのも事実です。
こちらの図をご覧ください
これはスキャモンの発育曲線と言われているグラフです。細かい説明はまた別の機会にしようと思いますが、注目して欲しいのは赤線で書かれている‘‘一般型’’の線です。これは20歳までにどういう経過を追って筋肉・骨が育っていくかを表したものですが、12歳〜16歳の間にこの赤線がグッと伸びているのがわかると思います。そしてこの時期の身体は大人の体とは違い、骨に弱い部分があったり筋肉や靭帯にも負担がかかりやすい時期であることがわかっています。
今回の記事では…
①成長期に多い怪我を防ぐために役立つ‘‘成長期の身体はどうなっているのか’’をまとめてみました
→成長期はなぜ怪我が多いのかを理解する
②身長を測ることのメリットを解説しています
→人生に1度しかない成長期を最大限いかせるようになる
この記事を通して…
- 身体の状態を知ることで、前向きにケアに向き合える
- これから出会うかもしれない怪我を予防できる
- より体の成長を促せる生活習慣を意識できる
こんな選手が1人でも増えてくれると嬉しいです。
だから怪我しやすい!成長期の体の特徴3つ
そもそも、なんで成長期は怪我しやすいと言われているのでしょうか?その理由を3つ挙げています。
理由1:骨に骨端線がある
骨は成長すると長く硬い骨になっていきます。骨の成長のために重要となるのが「骨端線」という部位です。その骨端線という部分から、新しい骨が作られ、柔らかく小さな組織から硬い骨へと成長していきます。
成長期の骨はこの骨端線があるおかげで成長しますが、逆にここが弱点となる場合があります。新しく骨が作られる場所であるがゆえに、まだ骨としての強度が弱いからです。
・ジャンプの着地や踏み込み動作で体重が過剰にかかる(圧縮ストレス)
・筋肉が硬くなり、骨端線がグイグイと引っ張られる(牽引ストレス)
この様な必要以上のストレスを受け続けることで、骨端線は傷んでいきます
スポーツなどで骨端線がストレスを受けすぎて痛みが現れると、病院では「骨端症」という診断がつきます。痛みの場所によって「シーバー病」や「ケーラー病」など診断名が変わる場合があります。
成長期が終わり骨端線が閉じると、骨の縦への成長はストップします。そしてこの‘‘骨が伸びる’’ということ自体が、次の項目である筋肉が硬くなりやすい理由にもなります。
理由2:筋肉が硬くなりやすい
筋肉はいわばゴムのようなもので柔軟性があります。しかし、この柔軟性が失われやすいのも成長期の特徴の1つだと思います。
実は筋肉と骨を比べると、骨の発達の方が早いことがわかっています。筋肉は骨にくっついているため、骨が伸びていくにつれ筋肉は伸ばされる状態になります。
柔軟性が低下した筋肉は
☑︎筋肉自体が損傷を受けやすくなる
☑︎全身の可動域が下がる
☑︎骨を過度にひっぱり、疲労骨折などの原因になる
など、怪我をするリスクを高めてしまいます。
気づかぬうちに硬くなる筋肉。習慣的なストレッチを心がけたいですね!
理由3:骨が靭帯の硬さに勝てない
身体を構成する骨はブロックのように積み重なっています。もちろんそのままではバラバラと崩れてしまいますので、骨を安定させなければなりません。そこで重要になってくるのが靭帯です。
靭帯は骨と骨をつないでおり、骨がグラグラしないよう止めてくれるロープの役割をしてくれます。
成長期では骨と靭帯の丈夫さを比べると、靭帯の方が強く骨の方が弱いです。この丈夫さの違いが怪我のリスクになります。
皆さんは人生で1回は、地面に生えている草を引っ張って抜いた経験ありますよね??
草を引っ張ると、地面も引っ張られて土がついてくると思いますが、人の身体も同じようなことが起こります。
草が『靭帯』
地面が『骨』
草が引っ張られると地面も引っ張られように、靭帯が引っ張られると骨にも剥がされる力が加わり、怪我に繋がります。
靭帯がまだまだ柔らかい(完成していない)骨を引っ張ることで、剥離骨折などのけがにつながります。理由1で挙げた骨端線の怪我にもつながります。
自分のPHVAを知ろう!
皆さんの身体が成長期であるがゆえに怪我をしやすいということは理解していただけたかなと思います。では、その怪我しやすい時期を上手く乗り越える手段はあるのでしょうか?その答えは冒頭でも述べましたが【身長を測る】ことです。身長を測ることで自分の体は一体どれくらい成長しきっているのかを知ることができるからです。
そこで、身長を測っていく中で『PHVA』を意識していきましょう!
PHVAとは…
P:Peak(最大)
H:Height(身長)
V:Velocity(増加速度)
A:Age(年齢)
と、それぞれの英語の1文字目をとって表されるこの言葉。自分の身長の伸びが一番が大きい年齢を示しています。もちろん、自分のPHVAは成長期が終わってみないとわかりません。しかし、大切なことはこのPHVAを把握しようと定期的に身長を測ることです。僕が帯同しているチームは1ヶ月に1回身長を測定してもらっています。その理由は、実際に数値を見ながら
・成長期ということを自覚することができる
・年齢ではなく身長の伸び具合で怪我しやすい時期なのか把握することができる
・身長を伸ばそうと生活習慣を見直すことができる
など、様々なメリットがあるからです。
具体的に例をあげてみましょう!
これは男性の平均身長を元に、1年に1回の測定をしたと仮定して作った表です
こうしてみると、10歳から11歳にかけて身長の伸び幅が増加(5.5cm→6.2cm)し骨の成長が早まったことがわかります。そして、11歳〜12歳までの+7.6cmが一番身長が伸びた時期(PHVA)ということが把握できます。逆に15歳からは伸び幅が軽減してきており、16歳から17歳の1年間では身長が1cmも伸びなかったことを考えると、17歳で骨が完成に近づいているということがわかりますね。
上の表は1年に1回の測定でしたが、3ヶ月毎や1ヶ月毎と測定期間を細かく測定することでより自分の変化に気付きやすくなるのでおすすめです。
いつもと比べ、伸び幅が大きくなってきたらPHVAが近づいている証拠。その時に…
- 怪我しないようにしっかりストレッチしよう
- 早めに寝よう
- たくさんご飯を食べてでっかくなろう
こんなモチベーションを得られることが出来ると完璧ですね!意識しないで過ごした場合と比べ、怪我のリスクを軽減できたり、身長も限界まで伸ばすことができるかもしれませんよ。
まとめ
成長期で体に起こっていることや身長を測ることのメリットを理解していると、今気をつけるべきことや対策が立てられます。また、身長を1cmでも伸ばすことができればそれはどんなスポーツにおいても有利になることが多く、今後の人生で「もっと背が高かったらなぁ」と後悔することも少なくなるかもしれません。
成長期を終えたからと言って怪我をしなくなることはありません。ですが、意識1つで防げる怪我は防ぎ、青春時代にスポーツを通して得られるものを最大限得ることは人生においてメリットがたくさんあると思います。
繰り返しにはなりますが、成長期というのは人生に1度きりしかない特別な時期です。知識を得た皆さんはしっかりとその特別なチャンスを掴んで、自分の体を大切に育ててあげてくださいね。
今回は以上になります!したっけね。