自分はよく足をひねっていて、もうクセになってるんです〜
膝が痛いのは昔からで、当たり前なんで慣れました♪
皆さんはこんなセリフ、スポーツをしている中で一度は言ったことありませんか?
上の言葉は実際に僕が選手たち(特に新中学1年生)に言われた経験のあるものです。
スポーツ活動をしていく以上、怪我は隣り合わせの存在です。
怪我の程度によっては数ヶ月〜数年に及ぶ離脱を余儀なくされたり、近年はコロナウィルスなどの流行によりスポーツ活動そのものが出来ない世界も私たちは経験してきましたよね
怪我や病気でスポーツ生活から離れると…
・筋力が落ちる
・体力が落ちる
・感覚が変になる
これらのことは皆さんも大なり小なり実感があると思います
では、これらが怪我の再発や大きな怪我のリスクになることはご存知でしょうか?
そして正しい復帰手順を知っていることでそのリスクを軽減できるとしたら、勉強してみる価値があると思いませんか?
そこで、今回は…
- 長期に休むことで起こる身体の変化
- 復帰する際の注意点
この2つについてまとめてみました。前述したような「よく捻る」「痛いのが当たり前」な生活は知識で避けていきましょう!
結論
・長期休養によって、筋肉・骨は萎縮し心肺機能は低下する
・急な復帰は怪我の再発・大きな怪我を発生リスクが高い
・スポーツ復帰へは5段階のレベルアップを基本に考える
運動習慣が途切れてしまうことで、筋肉・骨・肺などの心肺機能は低下し、再び身体を動かした際の「力の入らなさ」や「身体の重さ」として現れます。それは単純に身体にとっては過負荷になっており、怪我の再発やさらに大きな怪我を招くリスクがあります。スポーツ復帰には運動負荷を段階的に上げていくのが理想的で、5段階に分けると理解しやすいと思います。
さっそく見ていきましょう!
長期休養による身体の変化
部活などから怪我・病気などで長く離れることを長期休養といい、筋肉や骨などの能力が低下することは避けられません。そしてそれは、選手生命に直接繋がってきます。
長期休養は必ずしも悪い影響だけでは気ありませんが
スポーツ活動を続けるためのモチベーションが下がったりネガティブ思考が先行しがちです。
「復帰しても上手くできないかもしれない」「休んだらメンバーに選ばれないかもしれない」
そんな焦りも出てきて、まだ身体の準備ができてない状態で復帰してしまう方もいます
焦って復帰すると、かえって怪我が増えそうだね
闇雲に不安になるより、休むことで身体にどういう変化が起きてどう対処するかを
一緒に考えていけると良いなと思います!
筋肉への影響
筋肉は細くなり、柔軟性も低下する
休むことによって筋肉の活動量が減っていくと、どんどんと痩せ衰えていきます
これを<萎縮>と言います。
みなさんが「筋肉落ちたわー」とか「力入らなくなった!」というのはこういう状態です。
そして、筋肉は太ければ太いほど筋力が強いということが分かっています。
つまり、長期休養をとることで筋肉が萎縮していくため、発揮される力も小さくなってしまいます。
・久しぶりに手にしたボールやバットが重く感じる
・片足着地した時に膝がグラグラする
など、実際に体感した方もいるのではないでしょうか?
では実際に、萎縮した筋肉はどういう状態なのでしょうか?
分かりやすい例はズバリ、乾燥した輪ゴムです
実際に、萎縮が進んだ筋肉は乾燥した輪ゴムのように切れやすかったり伸び縮みしにくくなり、肉離れなどの怪我につながりやすくなります。
骨への影響
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筋肉と同様に、負担がかからなければ骨も萎縮します
萎縮した筋肉が乾燥した輪ゴムだったとしたら、萎縮した骨は穴あきチーズのようなものです。
過去、ドイツの解剖学者のウォルフさんは骨に関してある法則を発見しました。
正常にせよ、異常にせよ、骨はそれに加わる力に抵抗するのに
最も適した構造を発達させる
簡単に言えば、骨はその環境に適した強さになるということです。
スポーツをしていればそれに見合った強い骨になっていくし
スポーツをしていなければ日常生活レベルの強度の骨になるんだね
無重力状態で過ごした宇宙飛行士は地上と比べ
10倍の速さで骨が弱くなっていったという研究もあります
萎縮した骨は、構造的にも薄く・脆くなり疲労骨折や大きな骨折の原因になります。
練習を休む期間が長いほどスポーツレベルの骨の強度とは遠ざかってしまうため、スポーツ復帰直後からフルで練習に参加してしまうと怪我の可能性が高まってしまいます。
心臓や肺への影響
心肺機能は元々のレベルが高いほど急速に低下
いわゆる循環器系にも長期休養の影響は出てきます。
心肺機能が向上するためには、今のレベルよりもより高いレベルの負荷を受け続ける必要があります。
専門的に‘‘過負荷の原則’’と言い、筋肉が発達する際にも適応されます
長期休暇を取ることで心肺機能に過負荷がかかる機会がなくなり、結果として心肺機能は低下していきます。
実際に、コロナによるロックダウンや行動制限が心肺機能の低下の原因となることが報告されてます1)
様々な研究報告はありますが、おおよそ8~10週間以上のトレーニング中断期間を取ると、心肺機能はトレーニング前のレベルまで低下します2)。また、元々負荷の高いトレーニングをしていた選手の方が、心肺機能が急激に低下する報告もあります3)。
心肺機能低下を予防するためには、ある程度以上のトレーニングにおける刺激を継続的に与え続けることが必要です
復帰する時の注意点
段階的にレベルアップ
医療機関にかかっているならば専門家の指示に従う
復帰する際に、これが正解という答えは実はありません。
スポーツから離脱している理由は様々だからです。
しかし、汎用的な答えではありますが、段階的なレベルアップが必要なことは間違いありません。
段階的なレベルアップには、日本サッカー協会の基準が分かりやすく参考になるかと思います。
日本サッカー協会がコロナによる長期休養が強いられている現状を鑑み作製したものですが他のスポーツにも適応できると考えます。(https://www.jfa.jp/about_jfa/guideline.html)
参考にして作成した図が以下になります。
1人でできるもの→少人数でできるもの(競技性が入ってくる)→チームでできることという風に段階的にレベルアップしていきます
フェーズ1つをやり終え、身体に異常がなければフェーズをアップしていきます
「どれくらいの期間問題がなければ次の段階へ行ける」という基準は、素人では判断できません
前述した通り、怪我などのレベルは様々だからです
安全に復帰するのであればやはりプロフェッショナル(医師やトレーナーなど)の力を借りましょう
ちなみに、僕の感覚では1週間やり通して問題なければ次のフェーズ、つまりフェーズ5の公式戦に出場できるまで1ヶ月ほどをかけていきたいところですね
以下のような情報をくれると、復帰までのアドバイスがしやすいです!
- どのような動きの練習をしたのか
- どれくらいの強度でやったのか(自分の5割くらいの力…、10分間…など)
- 余裕だったか、痛みや不安感はあったか、どの練習(どんな動き)でそれを感じたか
- 逆にどうやったら痛くないのか、辛くないのか
- 練習直後、就寝前、翌朝、家ではどんな様子だったか
その場にプロがいなければ、自分で自分の体がどうかを判断しなければなりません
上記のようなことを意識して、受診した際に情報提供してくれると現場を想像しやすく大変助かります
自分の異常に気づくには、正常を把握しているかどうかが大切です
普段から自分の身体に興味を持ってくれると嬉しいです
長期休養をメリットにする
長期休養中に意識して欲しいことがあります。学生時代に身につけると、大人になってからも役に立つと思いますよ!
- 自分のケアの方法を知る
怪我をした部位は元々の動き方や筋肉の硬さ弱さなど、そこに負担がかかり理由があるはずです。プロにもらった意見を参考にしながら、自分はこのケアが大事なんだと気付けるとGoodですね - 気分転換をする
焦ってストレスを抱えるより、勉強する・本を読んでみる・親の手伝いをしてみるなどスポーツとは別の行動をすることで脳に新しい刺激が入り気分転換になります。自分がどうやったらストレスと付き合えるかを知ることは大切です。
まとめ
スポーツは様々なメリットをくれますが怪我は切り離せない関係にあります。さらに、コロナウィルスや家庭環境など、自分ではコントロールできないことに囲まれて生活しているのが現実だと思います。
長期休養を有意義に過ごすためには、普段からストレッチ・筋トレを自宅でもできる習慣をつけておくことや、今しかできないこと(元々痛かったところを治す、勉強に時間を割くなど)に着目して、そこに尽力するのが上手い過ごし方です。
スポーツから離れると、身体のレベルは落ちてしまいます
回復が不十分な状態で復帰すると、より身体への負担は増して
怪我のリスクは高まり右の負のループが回り始めます
怪我などで皆さんの貴重な時間を必要以上に奪われないために、この記事が参考になれば嬉しいです
今回の内容は以上です!したっけね〜
参考文献
1)Lopez-Bueno R, et al:Cardiorespiratory fitness in adolescents before and after the COVID-19 confinement.2021
2)ORlander J,et al:Low intensity training, inactivity and resumed training in sedentary men.1977
3)Mujika I et al : Muscular characteristics of detraining in humans.2001