【命を守れ】脳震盪の2大リスクと脳震盪に気づけない理由

まもる力

9割の確率で気づけないが
5割の確率で死に至る可能性がある

そんな病気に皆さんがかかってしまったらどうしますか?
未知のウィルスが蔓延した2019年、話題になり始めの頃は正体不明でどんな症状を引き起こすか分からない、しかも目に見えない敵に世界が動揺しましたね

同じように

・目に見える症状がなく
・本人や周囲も自覚が薄く
・しかし確実に死の危険と隣り合わせな障害

それが「脳震盪のうしんとう」です

フェンスに激突し倒れこむ楽天・西川遥輝選手(2022.6.18 サンケイスポーツ)

スポーツ現場では大きな力がぶつかり合い脳震盪が発生するケースが多々あります。


今回の記事では

  • 将来に関わる!脳震盪による2大リスク
  • 脳震盪を見逃してしまう理由3選
  • 脳震盪への対処とスポーツ復帰の例

これらテーマで脳震盪をまとめてみました。

冒頭で述べた<9割気づけず、5割で死に至る>は、極端ではありますが言い過ぎでもないということを知って欲しいと思います。
自分に・周りに脳震盪が発生した時に正しい行動が取れるよう知識をつけていきましょう!

結論

  • リスクその1:セカンドインパクト症候群
  • リスクその2:高次脳機能障害
  • 脳震盪への対策、大切なのは「脳の安静」
  • スポーツ復帰は専門家の指示に従う

セカンドインパクト症候群は命の危険があり、高次脳機能障害は生涯にわたって症状と向き合っていかなければなりません。
脳震盪が発生した場合に必要なのは脳の安静ですが、そもそも脳震盪に気づけないこともあります。
決して脳震盪を軽く見ずに、専門家の意見を取り入れながら身体を守って行けるように、一緒に勉強していきましょう!

危険な2大リスク

リスク1:致死率50%【セカンドインパクト症候群】
リスク2:社会生活に支障【高次脳機能障害】

セカンドインパクト症候群

脳震盪から回復していない状態で、再び脳に衝撃が加わることをセカンドインパクトといいます。
そして、セカンドインパクトが発生した場合、脳には「何かしら問題が起こる」ということが分かっています。

「あー、何もおきなくてよかった」が無いというのはそれだけで怖いことなのですが、実はその‘‘何かしら’’には「死」が含まれている。こう聞くとちょっとヒヤッとしませんか?

立て続けに脳に衝撃が加わることで発症し
致死率が30~50%と高く、助かっても何かしらの後遺症が残る

これがセカンドインパクト症候群というわけです。

1度目の脳震盪を見逃さないことが予防になりそうだね

おっしゃる通り!ただ、それが一番の難関です。
理由は後述するので、2大リスクの②へ行きたいと思います!

高次脳機能障害

脳震盪の影響として、セカンドインパクトと同様に覚えておきたいのは
高次脳機能障害こうじのうきのうしょうがいです。

高次脳機能は、人が人らしい判断や行動をするための機能のことで障害されると社会生活を円滑に送れなくなる可能性が高くなります。
セカンドインパクトとは異なり、脳震盪が長い時間をかけ何度も繰り返されることにより発症します

ボクサーに発症しやすい‘‘パンチドランカー’’という言葉は聞いたことあるかもしれませんが、まさに脳震盪からくる高次脳機能障害と言われています

脳震盪を見逃してしまう理由

  • 症状がありすぎて脳震盪か分からない
  • 脳震盪ごときでは休めない、すぐ回復した
  • 現場の雰囲気に飲まれる

じゃあとりあえず‘‘脳震盪が起こったら休めば良い’’ってわけだね

それは間違いありませんが、問題は脳震盪が起こったことに気付けるかどうかが重要です。脳震盪を見逃してしまう理由を見ていきましょう!

症状が多く曖昧

まずは代表的な脳震盪の症状をまとめましたので下の画像をご覧ください。


上の画像、パッと見てどうでしょう?
骨折や出血などに比べて見て分かるものが少ないと思いませんか?

一般的に脳震盪と聞くと「ぼーっとしている」や「気絶している」などのイメージがあるのではないでしょうか。
実はそういう自分や周りにとっても分かりやすい症状が発生するのは珍しい(9割は分かりにくい)ことが言われています。

このわかりにくさが脳震盪に気づかないことにつながります

休めない・すぐ良くなった

分かりにくい症状が多いと先ほど述べましたが、もしそれが脳震盪だと気づけたとしましょう
あなたは休めますか?あるいは選手を休ませられますか?

意識がボンヤリとしている、目の前がボヤけているなど自分や他人にもわかりやすい症状ならば良いかもしれません。
それが、軽い頭痛だったらどうでしょうか?プレー続行を選ぶ方も多いのではないかと思います。

症状の重い・軽いは無関係。脳震盪が発生したということは脳にダメージありのサインです。

じゃあ症状がなくなるまで休ませれば良いの??

答えはNoです!どれくらい休めば良いかは後述しますが、脳へのダメージは残っています。

少し休んで良くなった=復帰はNGです

脳にダメージがある時に復帰し、また脳にダメージを受けてしまうとどうなるかは先述した通りです!

場の雰囲気に飲まれる


残り時間わずかで実力は均衡。会場も大盛り上がりで、選手もアドレナリン出っぱなし。
こんな時にもちろん、休んでなんかいられませんよね。
特に多少ぼーっとするくらいなんて、頭をうった時にはよくあること!なんて誰しもが思ったことあるはずです。
しかし、これが危険な状況だということは既にみなさんなら理解していただいてると思います。

試合展開、会場の雰囲気、選手の状態、いろんな要素が絡み合って脳震盪を「よくあること」にしてしまっているんだね

実力のある重要な選手ほど代えがきかないため交代できない。ですが、プレータイムは長く怪我をしやすいというジレンマもあります。

脳震盪が起こったら

大切なことは脳の安静をとること

脳の安静と聞いてもピンとこないかもしれません
コートから出て横になって休んでいるなどは【身体の安静】
これだけではなく、考える・記憶する・注目するなど頭を使うことをしないことが【脳の安静】です

読書をする、勉強する、テレビを見る、大音量で音楽を聴く…など
例を挙げればキリがないですが

静かな部屋でゆっくり過ごせる環境設定ができれば最高ですね

また、症状が急変することもあるので
脳震盪状態の選手を1人にしないことも忘れずにいましょう

脳震盪からの正しい復帰

スポーツ復帰は専門家・医師の指示に従う

脳震盪が疑われたらまずは脳神経外科を受診です
スポーツ現場をしていると整骨院や整形外科が身近な医療かもしれませんね
もちろん、そこにいらっしゃる先生方もスペシャリストですが、脳を調べるためのMRIやCTの有無やそれら機械の機能が十分ではない可能性もあります

脳の怪我は、脳の専門家にだね

脳震盪だと思ったら’’急性硬膜下血腫’’だった。
など、裏に潜む重篤な疾患の可能性をしっかり潰すことが大切ですね

復帰時期は状態により変わりますので断定はできません
診てもらった専門家の指示にしっかり従いましょう

ここではざっくりと、これくらい厳密に管理しながら復帰するんだなというイメージを持ってもらうために、ある表を記載しますね。

スポーツにおける脳振盪に関する共同声明(2016,ベルリン)

これは2016年に行われた国際スポーツ脳震盪会議で提案された、安全に選手をスポーツ復帰させるためのガイドラインです
各段階の活動/運動を1つ行ったら24時間以上様子をみます、何もなければ次の段階に上がることができます
そして、段階1を開始するため絶対安静期間を24時間〜48時間設けることも推奨されていますので、最短でも1週間は競技復帰できないというのが現状の認識です

脳震盪は、これくらい復帰までの道のりを厳格に進めなきゃいけない怪我なんだね

「まだ休まなきゃいけないのか…」と焦る気持ちも痛いほどわかりますが
目に見えない怪我であるからこそ、慎重になってほしいですね

まとめ

今回は脳震盪についてまとめてみました

脳震盪は発生しないことが1番望ましいですが、事故的に起こってしまう怪我です。命の危険のあるセカンドインパクト症候群や、生涯に渡って悩まされる高次脳機能障害などがリスクとして生まれる怪我ですが、その症状の多さや分かりにくさ、あるいは試合の展開によっても見落とされる・軽視される怪我でもあります。

「疑わしきは除外」
僕はこの気持ちでトレーナー活動にあたっています。怪しいと思ったら、間違っていても良いので選手をコートから出そうということです。特に学生というこれからの将来が楽しみな皆さんの可能性を潰すことほど、あってはいけないと思うからです。

今回の記事で、少しでもその危険性と皆さんの関心度の穴埋めができていれば幸いです。知識と勇気で自分やチームメイトのカラダを守って、楽しいスポーツライフを送りましょう!

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